前回の記事では、「ランナーとしてのポテンシャルを拡げる」トレーニングについてまとめました。
詳しくは、下記記事をご覧になってくださいね。
今回は、「より洗練していくトレーニング」について、まとめていきたいと思います。
ランニングフォームに大きく関わってくるので、ご自身のフォームを想像しながらお読みください。
私の長年の指導経験から大切にしているポイントは、
a.力発揮(脱力)のタイミング
b.慣性の利用
c.連動性
です。
まずは、a.力発揮(脱力)のタイミングについて。
筋力やパワーが高いことは、ランニングにおいてアドバンテージになりますが、だからと言って「イコール速い」ではありませんよね?
ここで大きく関わってくるのが、「力の入れどころ」そして、「力の抜きどころ」です。
腕振りを例にあげます。
二つの動画を見比べてみてください。
違いがわかりますか?
上の動画は腕を下ろす瞬間だけ力が入って、他の局面では力が抜けています。
一方、下の動画はどうでしょう?
全ての局面で力が入っていて、力を抜いている局面がないですね?
初心者の方や運動経験が少ない方は、このon-offがうまくできないケースが多いです。
腕振りだけでなく、弾む動作においてもon-offのメリハリが大事です。
着地の瞬間、脚を引き上げる瞬間だけ力が入って、他の局面では脱力しています。
そうすることで、地面からの反発をもらいながら身体を運びやすくなるのです。
次に、b.慣性の利用について。
下のスキップ動作の行き帰りの違いを見分けられますでしょうか?
膝から下の動きに着目してみてください。
行きの動きは、膝から下(すね)が勝手に前に出ています。
一方、帰りの動きはブレーキをかけるような動きになっています。
ここでのポイントが慣性の利用です。
慣性というのは、学校で習ったかな…と記憶のある方もおられると思いますが、
「物体は力が加わって動き出すと抵抗がない限り動き続ける」
そんな物理現象です。
脚(膝)を前方に振り出して膝の移動が止まるとそこから下(すね)は自然に動き出します。
ところが、膝を曲げようとか上げようとする意識が働いてしまうとブレーキをかけてしまい、慣性が利用できません。
慣性を利用できれば脚は回転しながら効率良く推進しやすくなりますが、
いちいちブレーキをかけるような動きが入ってしまうと、力を入れる割に進むことはできません。
また、最初に解説したa.力発揮(脱力)のタイミングがいいと慣性が利用できるとも言えますね。
最後に連動性について。
上記のスキップも上半身の動きからの連動性を高めるトレーニングとなりますが、
最終的にはランニング動作で連動性を高めていく必要があります。
そこでおすすめするのが、陸上選手なら誰でもやっている「流し」という練習です。
場所の関係で短い距離になっていますが、本来は100mとか150m程度の距離をリズム良く走ります。
腕振りでタンタンタンタンというリズムをとってリラックスして走ります。
心肺機能や筋持久力などの体力を高めるために時には頑張ることも必要ですが、
いつも力んでばかりの走りだと適正なフォームを習得することはできません。
力感なく走れるスピードと距離でのランニングを繰り返し繰り返し行うことで、身体の各パーツ同士の連動性が高まり、
よりランニングフォームが洗練していきますよ。
連動性を高めるためにもa.力発揮(脱力)のタイミングが良くて、b.慣性の利用が上手にできることが大切ですね。
いかがでしょうか?
3回に分けて、
A.ランナーとしてのベースを作る(筋力・体幹トレーニング、感覚トレーニング、ストレッチ など)
B.ランナーとしてのポテンシャルを広げる(筋パワー、プライオメトリクストレーニング など)
C.ランナーとしてより洗練していく(ランニングドリル、機能的・特異的エクササイズ など)
まとめてきました。
一言でランニングのトレーニングと言っても様々なトレーニングがあります。
このトレーニングが良いとか、箱根駅伝のチームがやっているトレーニングがいいとか、
そう単純なものではありません。
まずは、ベースができていないと次のステップのトレーニングの質も上がらないですし、
自分の弱点を知り、その部分を修正、強化するという視点も大切です。
とにかく漠然と頑張るよりは、自分の現在地を受け止めて、試行錯誤しながらやっていくこと。
それを楽しみながらやること。
やったことのない動きを無意識にできるようになるには、平均66日かかるという報告もあるそうです。
焦らずに自分を信じて、時には客観的に見てもらって。
そうすれば成長していきますよ。
必ずね。必ず。