前回の記事では、
トレーニング(ランニング以外の)は、そのものが目的化するのではなく、
「ランナーとして成長を後押ししてくれるためのもの」
であるべきで、そのためには、
A.ランナーとしてのベースを作る(筋力・体幹トレーニング、感覚トレーニング、ストレッチ など)
B.ランナーとしてのポテンシャルを拡げる(筋パワー、プライオメトリクストレーニング など)
C.ランナーとしてより洗練していく(ランニングドリル、機能的・特異的エクササイズ など)
これらのトレーニングを個々の特性や目標に合わせて、段階的、発展的に積み上げていく必要があると綴りました。
そして、「A.ランナーとしてのベースを作る」具体的なトレーニングについてご紹介しました。
詳しくは、
ランナーの思考整理 ランニングに活かすためのトレーニングとは?
をご覧になってみてください。
今回は、基礎の部分を更に発展させていく
「B.ランナーとしてのポテンシャルを拡げるトレーニング」
について、まとめていきたいと思います。
このフェーズのトレーニングのポイントは、
a.力発揮の速さ(RFD)
b.伸張反射
c.弾性利用
です。
少し専門的な言葉が並んだので、出来るだけ噛み砕いてまとめていきましょう。
a.力発揮の速さ(RFD)
RFDとは、あまり聞き馴染みがないと思いますが、「Rate of Force Development」の略で、
日本語にすると「力の立ち上がり率」という意味です。
簡潔に言うと、RFDが高いということは
「中枢から筋肉に力を入れなさいという指令を出してから、実際に力を発揮するまでの時間が短い」
ということです。
このRFDを改善するためには、まずはスクワットなどでじっくりしっかり筋肉に負荷をかけて、ベースとなる筋力を高めること。
そして、それだけでなく瞬時に力を発揮をするトレーニングも取り入れていくことです。
具体的には、ウェイトリフティングのように重い重量を一気に持ち上げるトレーニングが有効ですが、
市民ランナーにそこまで求めるのは現実的ではありません。
オススメは、スクワットジャンプです。
また、メディシンボールを活用することも効果的です。
次に
b.伸張反射
筋肉は、一気に伸ばされる(伸張する)と筋肉内のセンサーが反応して反射的に収縮しようとします。
これを伸張反射と言います。
ランニングにおいてもこの伸張反射を利用できることは動きの効率性という点からもとても大事です。
具体的なトレーニングとしては、カウンタージャンプがあります。
また、坂道ダッシュもいいですね。
(あまり傾斜が急だと反射を利用できないので、負荷をかけられてリズムよく走れる傾斜がいいですね)
三つ目は、
c.弾性利用
いわゆるバネを上手に使うということです。
ランニングで言えば、アキレス腱をバネとして活用できるようになるということです。
具体的なトレーニングとしては、アンクルホップがあります。
もう少しレベルを上げるとタックジャンプ(ワンクッション・バージョン)という種目があります。
いかがでしょうか?
今回数種目をご紹介しましたが、それぞれ
a.力発揮の速さ(RFD)だけ
b.伸張反射だけ
c.弾性利用だけ
単独の効果をねらうのではなく、3つの要素を含んでいるとも言えます。
※タックジャンプは、弾性利用改善だけでなく、伸張反射も使うし、RFDの改善にもつながります。
学生時代は、かろうじて体育の授業で跳んだり跳ねたりあったとしても社会に出たらそんな機会は激減してしまいます。
鬼ごっこすることもないので、一生懸命走る機会もありません。
せいぜい、信号が点滅するとか、電車に乗り遅れそうになるとか緊急事態の時だけですよね?
なので、今回取り上げたような
「瞬時に力を発揮する」「反射機能を使う」「バネを使う」
これらの機能は必然的に低下していきます。
低下したものは、それらに対応した向上させるトレーニングをしていくしかありません。
意識でどうにかなるものではないですからね。
多くの市民ランナーは、フォームを良くしたいという気持ちはあっても、それに必要なトレーニングができていないと感じます。
今回取り上げたトレーニングを日常的に行って、本来持っていた機能を取り戻す、或いは更に向上させることができれば、もっと軽やかに走ることができるはずです。
また、次回ご紹介する「ランナーとしてより洗練していく」トレーニングの質を上げることにもなります。
全てのトレーニングは、繋がっていますから、どこかに弱い部分があると思ったように進歩していきにくくなります。
潜在能力を意識だけで変えようとしないで、それを引き出すためのトレーニングを。
継続して行えば必ず変わります。必ずね。